私を捨てないで。覚えていて。

私は最近、傘をなくした。 傘をどこかに置き忘れることはあっても、なくす、つまりどこに置いてきたのか、どこでなくしたのかわからなくなる、ということは今までなかったのに。ここ数年、年齢を重ねてきたせいか、人の名前や物の名前が覚えにくくなっている…

私は夫を無視することにした

私はしばしば夫を無視する。 これは夫、いや私たち夫婦のためなのだ。 自分で言うのもなんだけれど、私は「察する能力」がある方だと思う。あの人は次にこういう行動をするだろう、あの人は次にコレを欲しがるに違いない、と察する能力。この能力は仕事では…

人生に彩りが少ないのなら、クローゼットの中を見て欲しい

電車の中で私の目の前に座るステキな女子。ものすごく美人というわけでもないのに、なぜかキラキラして見える。私は吊革につかまる手に力を入れ、彼女を観察してみた。 うん、やっぱり顔って訳じゃない。彼女は確かにかわいい、けれどそこじゃない。髪型? …

それで、いいのだ! それが、いいのだ!

私にはギャップがある。 正直言って学生時代、そこそこモテた時期がある。だけど、なかなか相思相愛にはならなかった。なぜかというと、この「ギャップ」のせいだ。 私は表向き、おとなしくて従順な人に見えるらしい。だから、そういう人が好みであろう人が…

彼女は困った話がしたいのだけど

チカちゃんは、電柱につながっていない家に住んでいる。 だから2年前に家を新築した後、メーター検針の人がやって来た時には、家の周りをぐるぐる回って一生懸命メーターを探していたそうだ。しかし、探せども探せどもメーターは見つからない。そこで、検針…

片付けられないのは私のせいじゃない! ヌシのせいだったんです。

「そういう部屋には、たいていヌシがいるんですよ」 これを聞いたとき、私はまだどこか他人事だと思っていた。 私は小学生の頃から手芸が好きだった。フエルトや刺繍糸などの材料と、作り方の本を交互に見ながら、これから何を作ろうかと思案するのがとても…

私を監視していたのは彼女だった

私は常に見張られている。 それを考えると憂鬱になり、気が滅入る。逃げても逃げても追いかけられ、決して逃れることはできないのだ。 ある休日、私は朝からだらだらと何もせず、ゴロゴロして過ごしていた。 「それでいいの? いいわけないよね? 大切な1日…

自由研究でわかったことは「大人は信用ならない」だった

「こんなの、雑草ばかりじゃないか」 おじさんはがっかりした様子でそう言った。 私は夏休みの自由研究をやりたくなかった。けれど、宿題はやらないと怒られる。仕方がないので自由研究は「植物採集」にすることにした。 といっても、そもそもやりたくないの…

私は高校生のとき、男性教諭の恋愛相談に乗っていました

私は高校生の時、男の先生の恋愛相談に乗っていた。 今考えると、異様なことのようにも思えるのだが、その当時はそんなにおかしなことだとも思わず、むしろ、私のような小娘でいいんですか? 恐縮です。くらいにしか考えていなかった。 その年の夏休み、先生…

輪廻転生の案内人

「ここが死のゾーン」 「それで、あっちが生のゾーン、そして向こうが老いてゆくゾーンね」 今、私は輪廻転生の現場に来ている。こんなに間近で現場をみることができるなんて知らなかった。 まず私が案内されたのは、死のゾーン。ええ?! そんなゾーン案内…

まず確認なのですが、あなたと私は知り合いじゃないですよね?

「ちょ、ちょっと待って! あなたと、私は、知り合いじゃないですよね?」 きっとあの時、私の頭の上には「はてなマーク」が沢山出ていたに違いない。 私は、一歩外に出れば80%以上の確率で知り合いに会うような、そんな田舎町に住んでいた。近所の人は、家…

あなたは強すぎたのです! 早すぎたのです!

拝啓 暑さが日ごとに加わってまいります。お元気でお過ごしでしょうか。 あなたとお会いしなくなってもう5年ほど、いやもっとになるでしょうか。以前はあんなに頻繁に会っていたのに、今では会うことがなく、あの頃が懐かしく思えます。 あなたはよく私を頼…

あなたの意に沿わないかもしれないけれど

私は「ありがとう」が言えない。正確にいうと言えなかった。 私は落し物を拾ってくれた人がいれば「ありがとうございます」と言うし、友達と会って楽しい時間を過ごしたあとには「今日は会えて嬉しかった! ありがとう!」と言ったりもする。一日に何度も「…

私はもうすぐコピーロボットに乗っ取られます

私は怖がりです。テーマパークによくあるお化け屋敷になんて絶対入れないし、ジブリアニメのラピュタでさえ、何度も見ているのに毎回ドキドキして身体が緊張してしまいます。 できれば何事もなく、いつも平穏でほんわかと暮らしたいのです。 それこそジブリ…

私、ここまでなら脱げます

歳をとってきたせいなのか、かなり脱いでも平気になってきた。 お金を稼げるような、そんな人様にお見せできるような価値のあるものを持っているわけでもないし、有名人でもない。だから等身大の自分というものがわかってきたのかもしれない。 だいたい若い…

負けず嫌いは 「敗北感」 しか得られない

私は負けず嫌いだ。 あの人にも、あの事にも勝利したい。敗北感なんて感じたくなどない。 けれども、負けはやってくる。あの人にも勝てない。気づけば敗北感だらけだ。 ある時私は思った。 私はいったい何に、何のために勝とうとしているのだろうか? 勝ちた…

私はいつも ”それ” に気づくのが遅い

私はいつも ”それ” に気づくのが遅い たいていの人は、毎日体調の変化があるはずだ。 快眠、快便、食欲、健康、病気…… 人によってバロメーターとなるものは異なるかもしれないけれど、 なんとなく、今日は快適! とか、なんとなく、今日は調子が悪い といっ…